「やさしいくろと たゆたうあお」12月企画に寄せて
パチパチパチ 薪のはねる音がします。 青い夜に窯を焚く火が踊っています。炎を囲んで酒を酌み交わしながら笑う人の声が聴こえてきます。その声に誘われていつの間にか輪の中にいます。窯の中には、珠洲の地から目覚め、慈しむように形をおびた土が輝いています。「能登はやさしや土までも」、そのようにしてこの地は暮らしてきたのです。
あの日からもうすぐ一年。家や工房、窯を失くし、どうしたら創作が開始できるか検討もつかない状況の中から、心を整え空を見上げ、深呼吸しながら、少しずつ進んでいます。その日々から、今ここにある作品が集いました。被災を免れた作品、復興した窯で新たに焼成した作品、200点を超える作品が揃いました。10名の作家の作品を楽しめるのは、石川県外で初。また、復興を願い珠洲にゆかりのあるアーティスト8名も新作を書き下ろしていただきました。アートと工芸が織りなす珠洲のたゆたう世界に触れていただけるはずです。
連動するアーティストトークでは、宮脇まゆみさんと清水武徳を迎え今の思いを、語っていただきます。奥能登の伝統工芸の復興を研究されている日本文学研究者ロバート・キャンベルさんを聞き手にお迎えしました。能登と伝統工芸とその未来について深いお話が繰り広げられることでしょう。是非ご来場いただき珠洲に触れてください。
WHYNOT.TOKYO 運営代表 高屋典子